日本第四紀学会
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だいよんき Q&A


喜界島で過去7000年間に1000〜2000年周期で起こったとされる4回の隆起イベントの原因について (周期性の原因も含めて)教えてください。

質問者 : 主婦(東京都)

 

 Q&A <No. 6> 喜界島の隆起速度への回答に関連したご質問ですね. 喜界島の隆起イベントは,海溝型地震に伴う「地震隆起」だと考えられています.以下,順を追って説明していきます.

 喜界島は隆起運動の活発な島として知られます.琉球列島の南東に沿う琉球海溝では, 東から移動してきたフィリピン海プレートがユーラシアプレート(琉球列島側)の下に沈み込んでいます. 喜界島は琉球海溝に近く,なおかつ,その下に奄美海台という海底の大きな高まりが潜り込んでいることで, 活発な隆起運動が起こると考えられています.

 その隆起運動の様子は,喜界島の海岸部に広がる, 過去7,000年間に形成された隆起サンゴ礁の地形や年代を調べることで明らかにされました. サンゴ礁は海水面の直下に平坦な地形を造ります,しかし,喜界島の隆起サンゴ礁には, 標高の異なる4つの平坦面が階段状に広がっています.すなわち4段のサンゴ礁段丘が発達しているのです. それぞれの段丘を構成するサンゴ化石の年代を調べると,高位ほど古く,低位で新しくなります. これらを総合すると,過去7,000年間に4回,“急激”に海水面が低下,すなわち島が“急激”に隆起したことが分かります. 隆起が地震に伴うイベントであるという直接的な証拠は無いのですが, 房総半島などで知られる歴史記録に残された地震隆起を参考にすると,喜界島の“急激”な隆起は, 沈み込むフィリピン海プレートによって引き起された海溝型地震に伴うイベントであると考えます.

 次に隆起イベントの周期性についてです.喜界島で明らかにされた4回の隆起イベントの年代は, 古い方から6,300年前,4,100年前,3,100年前,1,400年前,それぞれの隆起量は,約5m,1m,2m,2mと見積もられています (Sugihara et al., 2003).イベントの間隔は2,200年,1,000年,1,700年と千年ほどの幅があり, 一定の周期というわけではありません.しかし,イベントの間隔と隆起量には,大きい隆起イベントの後は, 次のイベントまでの間隔が長いという規則性があります.この規則性は,他の場所でも見られます.

[参考文献]

  • 太田陽子・大村明雄(2000)南西諸島,喜界島のサンゴ礁段丘の研究小史と問題点―シンポジウムの序論として―. 第四紀研究, 39, 45-53.
    日本第四紀学会のHPからダウンロードできます.
  • 太田陽子(1999)「変動地形を探る I 日本列島の海成段丘と活断層調査から」古今書院
  • 島崎邦彦(1994)海の活断層を探る.島崎邦彦・松田時彦編「地震と断層」,東京大学出版会.63-84.

[引用文献]

  • Sugihara, K., Nakamori, T., Iryu, Y., Sasaki, K., and Blanchon, P. (2003) Late Holocene sea-level changes and tectonic uplift deduced from raised reef terraces, Kikai-jima, Ryukyu Island, Japan.Sedimentary Geology,159,5-25.

回答者 : 佐々木圭一
2012年9月26日掲載

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