日本第四紀学会
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だいよんき Q&A

喜界島の隆起速度に関する最新の研究成果を教えてください.

質問者 : 元教員(東京都)

 

 喜界島には,かつてのサンゴ礁が隆起して造られた海岸段丘,すなわちサンゴ礁段丘が発達しています.島最高位に広がる平坦な「百之台」もその一つで,標高は200mに達し,サンゴ化石のウラン系列年代測定によって約12万年前に形成されたと考えられていました(例えば大村, 1988).サンゴ礁は海面すれすれに形成されるので,12万年前の海面の位置が標高200mにあったということになります.海面の位置は時代とともに変化してきました.しかし,12万年前には現在より数m高かった程度ですから,島の隆起によって12万年前の海面が「百之台」の上まで持ち上げられたことになります.話を簡単にするために12万年前の海面も現在と同じ高さであったとすると,喜界島は12万年の間に200m隆起したことになるので,平均隆起速度は1000年に1.7mと計算されます.以上が従来の推定値です.しかし,最近の研究では「百之台」のサンゴ礁段丘が10万年前に形成されたという新しい解釈がなされました(Inagaki & Omura, 2006).10万年前の海面は現在より14m低かったので,標高に海面が低かった分を足した214m隆起したということです.10万年で214mの隆起なので,平均速度は従来より速い1000年に2.1mとなります.

 注意しないといけないことは,この数字はあくまで平均値で,1年に2.1mmずつ徐々に隆起しているわけではないということです.喜界島の海岸部に発達する隆起サンゴ礁を調べると,過去7000年間に少なくとも4回の隆起イベントが1000〜2000年周期で起こっていたことが分かります(Sugihara et al., 2003 など).約1400年前に起こった隆起イベントを最後に,喜界島は隆起をせず,安定な状態が続いているのです.

[参考文献]

  • Inagaki, M. and Omura, A.(2006)Uranium-series ages of the highest marine terrace of the upper Pleistocene on Kikai Island, central Ryukyus, Japan.第四紀研究,45,41-48.
  • 大村明雄(1988)中部琉球喜界島の地史ー琉球石灰岩産サンゴ化石のウラン系列年代測定のまとめとしてー.地質学論集,29,253-268.
  • Sugihara, K., Nakamori, T., Iryu, Y., Sasaki, K., and Blanchon, P. (2003)Late Holocene sea-level changes and tectonic uplift deduced from raised reef terraces, Kikai-jima, Ryukyu Island, Japan.Sed. Geol.,159,5-25.

回答者 : 佐々木圭一
2008年3月24日掲載

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