日本第四紀学会
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第四紀の定義

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中部更新世・中部更新統の名称がチバニアンに決定しました

2020年2月1日(第四紀通信28巻1号より)

韓国釡山で2020年1月17日に開催されたIUGS(国際地質科学連合)の理事会において、「千葉セクション」が下部・中部更新統境界の「国際標準模式層断面とポイント:GSSP」に、Chibanianが中部更新統と中期更新世の階(Stage)と期(Age)として承認されました。また亜統(Subseries)と亜世(Subepoch)として中部更新統(Middle Pleistocene)と中期更新世(Middle Pleistocene)も同時に承認されました。

更に同理事会により1月30日には、上部更新統(Upper Pleistocene)と後期更新世(Late Pleistocene)、ジェラシアンとカラブリアンから構成される下部更新統(Lower Pleistocene)と前期更新世(Early Pleistocene)が亜統と亜世として承認されました。

Chibanianの日本語名称としては、チバニアン階チバニアン期とすることが2月5日に報告されています(産業技術総合研究所ホームページ)。これらにより、第四系と第四紀は、上から完新統と完新世、更新統と更新世、これらが上部・中部・下部及び後期・中期・前期の亜統と亜世に3分され、更に階と期として、完新統と完新世は、メガラヤン、ノースグリッピアン、グリーンランディアンに、更新統と更新世は、未決定の上部と後期、チバニアン、カラブリアンとジェラシアンとなることに決まりました。亜統と亜世が承認されたことから、英文表記では Upper/Late, Middle, Lower/Early は頭を大文字表記することになります。

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完新統/完新世の三分

2018年6月14日に国際地質科学連合の理事会は、完新統/完新世の細分を承認しました。承認された内容は以下の通りです。
詳細はWalker et al., 2012, Journal of Quaternary Science, 27, 649-659 をご覧ください。

  • 下部完新統/前期完新世(Lower / Early Holocene):(グリーンランディアン階/期:Greenlandian Stage/Age)、下限は11,700 y b2k (before 2,000 AD)。GSSP = NGRIP2 Greenland ice core.
  • 中部完新統/中期完新世(Middle Holocene):(ノースグリッピアン階/期:Northgrippian Stage/Age)、下限は8,236 y b2k。GSSP = NGRIP1 Greenland ice core.
  • 上部完新統/後期完新世(Upper / Late Holocene):(メガーラヤン階/期: Meghalayan Stage/Age)、下限は4,250 y b2k。GSSP=a speleothem (specifically a stalagmite) from Mawmluh Cave, Meghalaya, northeast India. 模式標本はスミソニアン博物館に展示されることになるそうです。

参考: 2010 年に第四紀層序小委員会(SQS)が設置され、提案書は2016 年にSQS の投票メンバーによって推薦された後、2018 年に国際層序委員会(ICS)で承認され、今回の理事会の承認に至りました。この正式決定により、この区分に従って使用する場合は、英語表記で Lower / Early 、Middle 、Upper / Late のように最初を大文字表記することになります。

[参考文献]

  • Walker, M.J.C., Berkelhammer, M., S. Björck, S., Cwynar, L.C., Fisher, D.A., Long, A.J., Lowe, J.J. (2012) Formal subdivision of the Holocene Series/Epoch: a Discussion Paper by a Working Group of INTIMATE (Integration of ice-core, marine and terrestrial records) and the Subcommission on Quaternary Stratigraphy (International Commission on Stratigraphy), Journal of Quaternary Science, 27, 649-659.

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完新世の開始期の定義の批准

完新世の開始期の定義が批准されました

第四紀の始まりの定義が一新されたことは本会ホームページや本会シンポジウムを通じてお知らせしているところです. しかし第四紀を構成する地質時代のうち,最も新しい区分である完新世/完新統(Holocene)については, その始まりをどこに置くかがすでに正式に承認されています.このことは従来あまり紹介されていなかったため, 以下にその概要を記します.

更新世と完新世の境界については,グリーンランドのNorth GRIP氷床コア(75.10°N, 42.32°W) におけるヤンガー・ドリアス期が終わって温暖になり始める時期, すなわち11700 cal yr b2k(AD2000から暦年スケールで遡及した年数) を基準とする提案が2008年5月にIUGS(国際地質科学連合)執行委員会で批准されました(Walker et al., 2009).

この氷床コアでは,10347 cal yr b2kのSaksunarvatn Ashと12171 cal yr b2k のVedde Ashの間に境界が確認されています. これら2つのテフラは北大西洋の陸上や海底コア中に広く見出されているものです(Davies et al., 2002など). 通常,ヤンガー・ドリアス期とよばれるGreenland Stadial 1(GS-1)から完新世にかけての時期は, 氷の酸素同位体比の明瞭な変化,ダストの減少,d-excessの変化などから境界を明瞭に識別することが可能です. この模式地はグリーンランド中央部のBorehole NGRIP2(75.10°N, 42.32°W)に置かれており, この境界深度は1492.45mです.

以上の定義は気候変動に基づく物理化学的パラメータに基づいており, 一般の地質時代区分からは極めて異質なものといえます. そこで,生物層序との関連のつきやすい副模式地(auxiliary stratotype)が5個所設定されています. ヨーロッパではEifelmaar (Germany),北米大陸では Splan Pond(Canada), アジアからは日本の水月湖(福井県),オセアニアからはLake Maratoto (New Zealand), 深海底からはCariaco Basin (off Venezuela)が選定されています.

[参考文献]

  • Davies, S. M., Branch, N. P., Lowe, J.J., Turney, C. S. M.(2002)
    Towards a European tephrochronological framework for Termination 1 and the Early Holocene. Philosophical Transactions of the Royal Society London A360, 767-802.
  • Walker, M., Johnsen, S., Rasmussen, S. O., Popp, T., Steffensen, J-P., Gibbard, P., Hoek, W., Lowe, J., Andrews, J., Bjorck, S., Cwynar, L. C., Hughen, K., Kershaw, P., Kromer, B., Litt, T., Lowe, D. J., Nakagawa, T., Newnham, R., Schwander, J. (2009)
    Formal definition and dating of the GSSP (Global Stratotype Section and Point) for the base of the Holocene using the Greenland NGRIP ice core, and selected auxiliary records. Journalof Quaternary Science, 24, 3-17.

[ICS(国際層序委員会)による完新世/完新統の解説]

[ 学術用語については以下の文献も参照下さい]

  • 日本第四紀学会電子出版編集委員会編(2010)デジタルブック 最新第四紀学.日本第四紀学会.
  • 日本第四紀学会・町田 洋・岩田修二・小野 昭編(2007)地球史が語る近未来の環境.東京大学出版会.
  • 町田 洋・大場忠道・小野 昭・山崎晴雄・河村善也・百原 新編著(2003)第四紀学.朝倉書店.

(2010年1月31日 日本第四紀学会)


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第四紀と更新世の新しい定義に関連する地質時代・年代層序の用語について

本サイトを通じてお知らせして参りましたように,IUGS(国際地質科学連合) 執行委員会は地質区分として不確定だった第四紀を正式な紀/系として認め, 第四紀の新しい定義を正式に批准しました(2009年6月30日).これにより, 第四紀の始まりは従来の181万年前から258万年前に変更されました.

新たに第四紀の始まりとされた時期には地球全体で気候の寒冷化がおこり, 南北両半球に大規模な氷床が形成されるようになりました. そして,この時期から氷床の拡大・縮小が繰り返され, 氷期・間氷期の交代で特徴づけられる第四紀の気候変動・環境変動が始まりました. 人類は,これらの気候と環境の変動に対応して進化と拡散の歴史を重ねてきました. 今回の改定では,地質区分境界を決めるのにあたり,この気候変動の開始時期が重要な着眼点となりました. 第四紀における気候変動・環境変動に関する知見は, 現在私たちが抱えている温暖化問題などの地球環境の将来を考えるうえで重要な情報となっています.

日本第四紀学会は日本学術会議および日本地質学会とともに, 第四紀の新しい定義問題とわが国の地球惑星科学における対応を検討して参りました. ここで得た結論を以下に報告し,今後の国内での普及に努めて参ります.


2010 年1月22日

日本学術会議地球惑星科学委員会 IUGS 分科会
日本学術会議地球惑星科学委員会 INQUA 分科会
一般社団法人 日本地質学会
日本第四紀学会


第四紀と更新世の新しい定義と関連する地質時代・年代層序の用語について

国際地質科学連合(IUGS)は,国際層序委員会(ICS)の決定を受け, 2009年6月30日第四紀・第四系と更新世・更新統の下限の定義について以下の勧告を発表しました.

 1) 更新世・更新統の下限は,更新世・更新統がジェラシアン期・ジェラシアン階を含むように引き下げ, ジェラシアン期・ジェラシアン階の下限が定義されているモンテサンニコラ GSSP をもって定義されること.
 2) 第四紀・第四系の下限,すなわち新第三紀・新第三系(注1)と第四紀・第四系の境界はモンテサンニコラ GSSP をもって公式に定義され,それは更新世・更新統およびジェラシアン期・ジェラシアン階の下限に一致すること.
 3) 以上の定義に従って,ジェラシアン期・ジェラシアン階は,鮮新世・鮮新統から更新世・更新統に移動する.

日本学術会議地球惑星科学委員会 IUGS 分科会,同 INQUA 分科会,一般社団法人日本地質学会, 日本第四紀学会はこの勧告を受けて,日本国内での地球惑星科学における対応を検討してきましたが, 以下のような結論を得ましたのでここに報告し,今後国内での普及につとめていきます.

  1. 日本は新しい更新世・更新統,第四紀・第四系の定義を受け入れて,今後これを使用する.
  2. 更新世・更新統の細区分については,従来から用いられている後・中・前期更新世および上・中・ 下部更新統の三分を継承する.前期更新世および下部更新統にジェラシアン期・ジェラシアン階を含め, 前期更新世および下部更新統は,カラブリアン期・カラブリアン階と合わせて2つの期・階から構成されるものとする.
  3. 表に示した年代値は一部検討中(注2)であるが,以上に定義された地質時代・年代層序の定義を用いる場合は, 図1に示した年代を上限・下限として用いる(注3).
  4. IUGS による英語表記を図1に示したように日本語で表記する.
  5. 鮮新世の区分は上・下部鮮新世,後・前期鮮新統の二区分とし,IUGS が定義する ザンクリアン期・ザンクリアン階, ピアセンジアン期・ピアセンジアン階に対応させる.
  6. これまで新第三紀・新第三系と古第三紀・古第三系を併せた地質時代として用いられてきた, 第三紀・第三系は非公式な用語として使用することができるが,学術論文,教科書, 地質時代・年代層序表には使用をしない.
  7. IUGS が定義する Neogene Period ・Neogene System,Paleogene Period・Paleogene System に対応する日本語として, 新第三紀・新第三系,古第三紀・古第三系を従来どおり使用する. 従って,新生代・新生界は,第四紀・第四系,新第三紀・新第三系,古第三紀・古第三系に3区分される.
  8. ジェラシアン期・ジェラシアン階下限の日本国内の副模式地の選定は現在進行しつつある研究成果をまって決定する.
  9. 地質時代区分の名称として一部で使用されている沖積世・洪積世の使用は廃し, 完新世・更新世を使用することを徹底する(注4).

(注1)Neogene Period・Neogene System に相当する日本語名称として新第三系・新第三紀を用いることは結論8に記されている.
(注2)後・中更新世および上・中更新統の名称については,それぞれを タランティアン期・タランティアン階, イオニアン期・イオニアン階がIUGS-ICSで検討されている.
(注3)図1の年代値は, その精度,境界の層位を考慮して,IUGS の年代層序表を一部改めたものである.
(注4)地質時代区分以外にも一部に用いられている『洪積』の使用も廃する. 『沖積層』は『沖積世』の地層あるいは完新統ではないことを周知させたうえで使用を継続する.

図1.新しい年代層序単元と地質年代単元 <地質単元>

[関連シンポジウム]

(2010年1月22日)

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第四紀の地位と新しい定義の確立

第四紀の地位と新定義に関する最新情報です(第四紀通信16巻5号の記事にもとづく)

第四紀の地位と新しい定義が確立されました

 2009年6月30日,IUGS(国際地質科学連合)執行委員会は新しい第四紀の定義を正式に批准し, 長年にわたって議論を呼んだ第四紀の地位と定義に関わる問題は解決されました. 2007年のINQUA提案と2008年のIGC(国際地質学会)での討論会を受け, Stan Finney ICS(国際層序委員会)新委員長の強い指導力のもとでICSの議論と決定が急速に進み, 2009年初めから票決が行われました.第1段階の提案と票決は:(1)Vrica GSSPを第四紀/系の基底とする[否決], (2)INQUA-SQS(国際層序委員会)第四紀小委員会提案:Gelasian基底を第四紀/系および更新世の基底とする[可決], (3)Neogeneを現在まで延長し第四亜紀を設け,鮮新世を細分する[否決]. この結果を受け,第2段階では,(2)INQUA-SQS提案承認の可否が問われ,16対2で承認されました. 票決の報告を受けたIUGS執行委員会は2009年6月31日づけで,以下の新しい定義を公式に批准しました.

 1) the base of the Pleistocene Series/Epoch be lowered such that the Pleistocene includes the Gelasian Stage/Age and its base is defined by the Monte San Nicola GSSP, which also defines the base of the Gelasian;
  2) the base of the Quaternary System/Period, and thus the Neogene-Quaternary boundary,
be formally defined by the Monte San Nicola GSSP and thus be coincident with the bases of the Pleistocene and Gelasian, and
  3) with these definitions, the Gelasian Stage/Age be transferred from the Pliocene Series/Epoch to the Pleistocene.

 これにより,正式の紀/系である第四紀は,従来鮮新世に区分されていた Gela 期/階(Gelasian)を含むこととなりました. 鮮新世−更新世境界も Gelasian基底まで引き下げられ,前期更新世には従来のCalabrianとGelasian が含まれます. Monte San Nicola GSSPのGelasian基底は,ガウス/松山地磁気境界の約1m上位に位置し,年代は2.588 Maとされますが(Head et al., 2008), これが第四紀の始まりの年代となります.この層準で突然氷床拡大や寒冷化が始まったわけではありませんが, 2.7〜2.8 Maに始まる世界的な寒冷化が恒常的となった時代で,かつ古地磁気により明確に指示される層準が基底として定義されました. 日本でもこの時期に寒冷化へ向かう環境変動が生じたことは確かなようです.

 日本第四紀学会と日本学術会議INQUA分科会は,同IUGS分科会,日本地質学会等と協力して, 新しい第四紀の定義を日本に定着させるための作業を実施するため,2009年8月の大会で『第四紀の新しい定義に関する特別委員会』を設置しました. 第四紀の研究と第四系に関わる教育やさまざまな応用的側面で緊急の対応が必要とされているこの問題について, 幅広い意見を集約して検討を進めていきます.

同委員会の連絡先は 奥村晃史(kojiok@hiroshima-u.ac.jp)です.

 文献

  • Head, M. J., Gibbard, P., and Salvador, A., 2008, The Quaternary: its character and definition, Episode, 31, 234-237.
  • 奥村晃史・佐藤時幸・熊井久雄・鈴木毅彦・渡辺真人,2009,第四紀の地位と新しい定義の確立.日本第四紀学会講演要旨集,39,56-57.  
  • IUGS 機関誌:Episodes 31巻2号(2008)に第四紀問題全般が詳しく解説されています.

奥村晃史(第21期日本学術会議地球惑星科学委員会INQUA分科会委員長・広島大学)

(2009年9月18日)

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第四紀の定義について-国際地質科学連合 (IUGS)理事会の批准-

2009年6月29日に行われた国際地質科学連合 (IUGS)の理事会での投票の結果, 国際層序委員会(ICS) の提案は批准されました. 同年6月30日の批准文書は ここからダウンロードして下さい.

IUGSの批准文書(pdf 58KB)

(2009年7月17日)

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第四紀の定義について-国際層序委員会 (ICS) で採択-

第四紀の定義に関係して,5月に国際層序委員会(ICS)で投票が行われ, 第四紀・系は,2.588 Maまでの正式な年代区分の提案が採択となりました.

国際地質科学連合 (IUGS)での承認が必要ですが,NatureやScienceで, ICSの結果が速報されています.

  • Nature, June 4, 209, v. 459, p. 624, Mascarelli, A.L., Quaternary geologists win timescale vote.
  • Science, June 5, 2009, v. 324, p. 1249, Keer, R.A., The Quaternary Period Wins Out in the End.

最新の詳細な情報は,
http://www.quaternary.stratigraphy.org.uk/Temporary%20Items/
関連情報は,
http://www.stratigraphy.org/view.php?id=19
http://www.quaternary.stratigraphy.org.uk/
に掲載されています.

(2009年6月9日)

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