日本第四紀学会
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だいよんき Q&A


アケボノゾウやナウマンゾウ等祖先を大陸起源にもつ大型哺乳類はいつ、どんな経路で日本に来たのですか?

質問者 : 主婦(兵庫県)

 

 約270万年前に北半球高緯度に大規模な大陸氷床が形成されたため,氷期と間氷期サイクルが顕著になりました. 約270万年前から100-90万年前の氷期・間氷期サイクルは約4万年周期で,氷期には大陸氷床の成長で海面が60-70mほど低下しました. 約60万年前以降の氷期・間氷期サイクルは,約2万年周期と10万年周期が卓越し,氷期の海面の低下量は120-130 mに達しました. 100-90万年前から60万年前は卓越周期が変化していく時代でした.

 このように100万年前とその前後の数十万年間の時代には,氷期と間氷期サイクルに伴って,海面が60-70mも変動したので, 陸上哺乳類の日本列島への侵入路である陸橋(そこが水没してできた海峡)の状態も数万年周期で大きく変化しました. その上,その期間におけるアジア大陸と西南日本の間にあった陸橋や海峡の正確な位置も上明です. それで,正確な古地理図を描くことができないのです.

 しかし,陸橋の存在は大陸起源の大型陸上哺乳類の化石記録から推定できます. また,間氷期の海峡の存在は,日本海の地層に保存されている「対馬海流で運ばれた海洋生物の化石から推定されており, 約170万年前以降の間氷期には,アジア大陸と西南日本の間に海峡があったことが分かっています. したがって,100万年前とその前後の数十万年間の時代で,陸橋が出現したのは氷期の海面低下期に限られます. なお,アジア大陸と西南日本の間に海峡が形成されたのは, 約200万年前に始まったフィリピン海プレートの沈み込み方向の変化に伴なう沖縄トラフ北縁部の断裂によると考えられています.

 また、陸橋を渡ったゾウについて詳しく述べるならば、まず日本の第四紀の地層から知られているゾウの仲間で、 大陸からやってきたと考えられるものと、日本で進化したものを分けて考える必要があります。 ナウマンゾウ、トウヨウゾウ、トロゴンテリゾウ(シガゾウやムカシマンモス)は大陸からわたってきたものと考えられますが、 アケボノゾウはその祖先が大陸から古い時代に渡ってきて、日本で進化した種類と考えられます。 現在の考えですとナウマンゾウが渡ってきたのは約43万年前、トウヨウゾウが渡ってきたのは約63万年前、 トロゴンテリゾウが渡ってきたのは約120万年前となります。これらの渡来は東シナ海に一時的にできた陸橋を通って行われたと考えられ、 少なくとも第四紀に長期にわたって日本列島が大陸の一部になったということはありません。多くの期間、日本列島はずっと現在のような島だったと考えられます。 最新の研究成果は、以下の文献とそこに引用されている文献を見てください。

[参考文献]

  • 河村善也 (2014) 日本とその周辺の東アジアにおける第四紀哺乳動物相の研究ーこれまでの研究を振り返ってー.第四紀研究53(3), 119-142.
  • 北村晃寿 (2010) 10-8 更新世の貝化石. デジタルブック最新第四紀学第2版.日本第四紀学会電子出版編集委員会編.

回答者 : 河村善也 ・北村晃寿
2014年9月23日掲載

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