日本第四紀学会
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だいよんき Q&A

 第一紀、第二紀はなぜないのですか?

質問者 : 大学生(兵庫県)

 

 「第四紀」や最近まで地質年代表にあった「第三紀」に対して「第一紀」や「第二紀」が見当たらないのはどうしてでしょうか.実は地質学の揺籃期である産業革命の時代(18世紀)には「第一紀」や「第二紀」もありました.化石を含まない岩石を「第一紀の岩石」とし,現在では見られないような生物を化石として含んでいる岩石を「第二紀の岩石」としていました.現在の分類では,「第一紀の岩石」は主として化石を含まない花崗岩などのマグマが冷えて固まった岩石などです.「第二紀の岩石」は現在の分類では古生代の地層群などです.これらの岩石は,例えば「第一紀の岩石」などは詳しい研究によって「花崗岩」や「安山岩」などに分類されて,これらは別の分類群である「火成岩」や「変成岩」としてまとめられ,「第一紀の岩石」という分類は消滅して行きました.同様に,「第二紀の岩石」も詳しい化石の研究によって「カンブリア紀の岩石」や「石炭紀の岩石」に分類され,それらを総括する用語である「第二紀の岩石」という言い方はされなくなって,「古生代」の岩石としてまとめられるようになりました.一方,現在の生物に似ているけれど形が少し違う生物を化石として含む「第三紀」の地層は,そのまま第三紀の地層として研究され続けてきましたので,その名前はつい最近まで残っていました.ただし,最近では,この「第三紀」も「Neogene」と「Paleogene」に二分されて,それぞれが「新生代」の中の区分とされています.これらの時代名が英文になっているのは,いまだにこの日本語訳が決められていないためです.

 最後に「第四紀」ですが,これは産業革命からかなり後になって作られた地質年代区分で,人類が地上に現れて以降現在を含む時代ということで,新たに「新生代」の中の分類として作られた年代区分です.ただし,この区分も,「すでに第一紀や第二紀さらには第三紀までの名前がなくなったのに,第四紀だけがあるのはおかしい」とか「ほんの短い時代をひとつの独立した紀と区分するのはどうか」などの理由から,なくしてしまえと言う意見が出されていて,将来とも「第四紀」が使われ続けるかは問題とされています.

回答者 : 熊井久雄
2007年2月13日掲載

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