2012年度研究委員会活動報告
2012年1月から4年間の計画で下記の4つの研究委員会が活動を行っている
「最終氷期最盛期における北東アジアの生態系変遷と人類の応答」研究委員会(代表者:出穂雅実)
INQUA のHumans and Biosphere(HaB)コミッションにおいて採択された2012年度プロジェクトHuman Technological and Behavioral Adaptation to
the Last Glacial Maximum in Northeast Asia(Project No.1206)の国内における対応委員会として、
LGM における北東アジアの生態系変遷と人類の応答を具体的に再構成することを目的としている。
この目的を達成するため、南シベリア、モンゴル東北部、および北海道の当該時期の発掘調査を実施し、
遺物空間分布と石器製作技術等の考古学的分析から行動論的復元をおこなう。さらにこれらの考古学的分析結果を、
放射性炭素年代及びテフラ編年による地質学的対比によってLGM の北東アジアの考古学・自然環境データと広く対比し、
当該期の人類社会の変化プロセスと要因を明らかにすることを目標としている。
2012年度は、研究委員会の活動の一環として、2012年11月30日に首都大学東京において第1回会議 International Workshop:
Upper Paleolithic Geochronology around the LGM in Northeast Asia を開催した。
発表は11件あり、アメリカ2名、ベルギー1名(発表2件)、ロシア1名、モンゴル2名、日本4名である。
合計22名の参加があった。発表の後には活発な討議が行われ、研究の今日の到達点と今後の方向性を共有することができた。
テフラ・火山研究委員会(代表者:植木岳雪)
INQUA, Commission on Stratigraphy and Chronology(SACCOM)の下の International Focus Group on Tephrochronology and Volcanology(INTAV) に対応する日本第四紀学会の組織として、テフラ研究者が情報を交換し、研究を推進することを目的とする。 当初2013年3月に研究集会を行う予定であったが、実施できなかった。そこで 2013年11月9、10日に首都大学東京において、 首都大学東京と共催でテフラの研究集会を行うよう、現在調整を行っている。また、2014 年春ごろに、野外見学を含めた研究集会を実施することを考えている。
古気候変動研究委員会(代表者:公文富士夫)
INQUA における古気候委員会(PALCOMM)に対応する委員会として、日本および東アジアを中心とした古気候変動を解明するために活動する。
具体的には、1) 5 万年前から現在までの気候変動の高精度解析、2) 中・後期更新世の古気候情報の編年と統合、
3) ヒマラヤ・チベットの隆起活動と東アジア・モンスーン変動の解明、をおもな課題として活動を進めている。
2012年度は、12月21 〜 23日に福島大学で一般向け講演会「猪苗代湖掘削の成果と第四紀の気候・環境変動」を開催するとともに、
上記の1)と2)の課題にそった資料の収集の一環としての研究発表および今後の取り組みについての相談のためにワークショップを開催した。
研究発表は9件あった(集会の様子と講演の概要は第四紀通信第20 巻2 号に載せています)。また、今後の研究の進展や資料の集成のためには、
年代の基準を統一することの重要性が確認され、ある「基準」を決めて、「統一化」を図ることが提案された。
その試案(抽象的な段階であるが)を、研究集会の報告の一部として、第四紀通信で報告した。
研究資料の集成方法については、Lisiecki 氏によって開発された統合化プログラム「Match」「Autocomp」の有効性が紹介された。
次年度までには、より具体的な形に整理したテフラの「標準年代試案」を作成して、議論を喚起する段階まで進めたい。
古地震・ネオテクトニクス研究委員会(代表者:吾妻 崇)
INQUA のTerrestrial Processes, Deposits and History のFocus Area Group “Paleoseismology and Active Tectonics” に対する国内活動の推進を主目的とする。 近年社会的に注目されている古地震や古津波の研究についてのアウトリーチや、関連諸分野との連携を深めるため、野外観察会などを開催した。
- 遠州灘沿岸の古地震・津波痕跡についての野外集会
開催日:2012年8月13日(月)9:30 〜 16:30、案内者:藤原 治会員、吾妻 崇会員(産総研)
参加者:25 名(学生3名)、参加費:3000 円(学生2000円)
行 程:掛川駅-太田川工事露頭(1498年明応津波堆積物の観察)- 掛川市大須賀(1707年宝永地震による横須賀湊の隆起跡)-
御前崎(完新世海岸段丘群および更新世段丘)- 掛川駅
- 深谷断層見学会(活断層学会主催、本委員会は共催)
開催日:2013年6月9日(日)9:30 〜 17:30 案内者:水野清秀会員(産総研)ほか、案内補助2 名(豊蔵氏、細矢氏) 参加者:21 名(学生5 名)、参加費:5000 円(学生3000円) 行 程:深谷駅 - 瀧宮神社 - 深谷断層(岡部、根小屋)- 平井断層(金井)- 櫛挽断層(寄居)- 深谷駅 ※見学会説明用ポスターを利用して、深谷駅のギャラリーで「深谷断層展」を実施。活断層フォトコンテスト入賞作品を併せて展示。見学者数は50名弱。