日本第四紀学会
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2007年度研究委員会活動報告

INQUAのCommission、International focus groupなどのプロジェクトに対応した研究委員会活動を募集し、5件の申請を確認した。 第2回評議員会での承認をうけ、支出を含めた年間計画書の提出を依頼し、それをもとに予算配分を検討した。 大会シンポジウム等での成果発表を要請するといった、成果の還元方法について検討を行った。2007年度は以下の5委員会が活動を行った。

地球温暖化問題を検討する研究委員会(代表者:陶野郁雄)

 本研究委員会は、本年2 月の委員会設置後、メールで各委員の意見を求めつつ、委員の拡充を図ってきた。 その結果、現段階での委員は19名(内非会員5名)となっている。また最初の活動として、「地球温暖化フォーラム2008」として、 スイス国立工科大学の大村 纂教授に講演をお願いすることにした。そして、関係省庁や学会の後援を得て、 7月12日に日本大学文理学部100周年記念館国際会議場において実施した。大村教授は洞爺湖サミットのため来日中で、 『現温暖化現象下における氷河の変遷』をテーマに最先端のデータをもとに講演を行い、聴衆に感銘を与えた。 混雑が予想されたため、予定の午後の部(14:00-16:00)以外に、急遽学生向けに午前の部(10:30-12:30)も行った。 参加者は午後の部が約120名、午前の部が約240 名であった。

 7月12日のフォーラム終了後、第1回委員会を開催した。出席者は12名であった。第1回の委員会であることから、 各委員より自己紹介と共に委員会活動との係わりについての報告がなされた。 委員長から、情報の収集とその共有化及び一般の人に対する広報を主目的とし、主にメールを用いて活動したいとの報告があった。 そして、今後の活動について議論を行った。

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東アジアにおける酸素同位体ステージ3の環境変動と考古学研究委員会(代表者:小野 昭)

 酸素同位体ステージ3(OIS3)には人類の進化史、道具の製作技術史、現代的な認知構造の展開や芸術活動の開始問題など、 どれをとっても重要な問題が集中している。こうした諸問題をめぐりヨーロッパを中心に議論されてきた資料的な前提 研究の問題意識、論点を明らかにし、それをふまえて東アジア、 日本列島における当該期の環境変動と考古学がかかえる問題の解明を試みることを、本研究委員会の目的として設定し、 プロジェクトが2008年2月に始まった。以下2007 年度後半の活動を報告する。 また、本研究委員会としてINQUA Project 2008に予算申請し採択された。今後他の研究委員会が申請する際の参考となるよう要点を記す。

  1. 全体計画の策定:
    2008年4月26日 首都大学東京(八王子南大沢)で5カ年計画原案作成の会議を開催した。大筋で以下の予定を了解した。
    • 2008年6月 日本旧石器学会第6回大会と共催でシンポジウムを開催する。
    • 2009年2月 日本第四紀学会シンポジウムを当研究委員会の内容で引き受ける用意がある。
    • 2010年(月未定)日本で国際研究集会(ワークショップ)を開催する。
    • 2011年 成果の取りまとめに入る。
    • 2012年 Quaternary International に特集号を組む。 あるいはB.A.R.(British Archaeological Reports) International Series に論集として申請する。 日本語の論文集は別途刊行の実現を目指す。
  2. 2008年6月21・22日に日本旧石器学会大6階大会と本研究委員会の共催でシンポジウム 「日本列島の旧石器時代遺跡:その分布・年代・環境」を開催した。 後援は日本学術会議、ならびに国際第四紀学連合(INQUA)「古生態と人類進化研究委員会」 ( Commissionon Palaeoecology and Human Evolution )。
    1) ドイツから著名な研究者2名を招聘し記念講演をおこない、2)OIS3の中頃の古気候変遷、年代論、動物相、植物相など、 第四紀学の諸分野の成果を、旧石器考古学の検討課題とリンクさせてシンポジウムとをおこなった。全体は記念講演、 一般発表、シンポジウムの3部で構成。記念講演は、本シンポジウムに深く関連した地域的で、 グローバルなテーマと14Cの較正年代の問題について問題提起がされた。
    • N.コナード (Nicholas Conard テュービンゲン大学考古学研究所教授):
      Current research on the late Middle Paleolithic and early Upper Paleolithic of the Swabian Jura
    • O. イェリス (Dr.Olaf J_ris ローマ・ゲルマン中央博物館旧石器研究部門):
      The impact of an U/Th-Hulu-based radiocarbon age calibration on the OIS 3 archaeological record
     この共催シンポジウムは本研究委員会としての最初の取り組みであった。委員会のメンバーからは、 工藤雄一郎氏が「40〜15kaの石器群の年代と古環境」、公文富士夫氏が「野尻湖データによる過去6 万年間の気候変動の複元」 の題目でそれぞれ基調報告をおこない、叶内敦子、公文富士夫、高橋啓一の各氏が関連テーマについて コメンテーターとして発表をおこなった。参加者数は、名簿への記入が170名、21・22 両日を合わせると延べ約200数十名にのぼる。 シンポジウムの内容は、2008年7月9日の朝日新聞全国版にも「歴史に探る気候変動(上)」として大きく取り上げられた。
  3. INQUA Project 2008 への申請と採択
     2008年のINQUA Projectの公募があり、その締め切りが2008年1月30日であった。本研究委員会は準備段階であったがこれに申請した。 Inter Congress の4年間であるが、申請は1年ごとである。本研究委員会から題目に幅を持たせ、Palaeoenvironmental changes and human dispersals in North and East Asiaduring OIS3 and OIS2で申請した。このプロジェクトの性格はINQUAのHPに記されているが、 特徴点を列挙する。申請は所属のCommissionを通じてINQUA本部に提出する。補助金支給に関する注意点として、 広域をカバーし特定のコミッションのテーマだけに限定されないプロジェクトが推奨される。問題解決型プロジェクトがのぞましく、 単一のワークショップや一般的な会議は適合しない。フィールドでの調査研究に補助金は支給されない。 途上国の若手研究者への参加旅費の援助は推奨される。成果はQuaternary International 誌に掲載されるよう考慮する、など。 申請額の上限は5000USドル程度である。今回の申請では上限を少し上回る額で要求。若干減額されたが、 2008年4月24日に採択と金額(ユーロ)の内示連絡を受ける( 承認の公式 Project No.0807)。 内示から実際に指定額が銀行口座に振り込まれるまでの過程は以下のとおりであった。
    • 4月28日内示。内示文書(添付の内示文書の日付は4月24日)に、 さらにプロジェクトの「具体的な目的」と「予想される結果(成果)」の補足説明を求める旨の要請あり (申請者としては充分に具体を尽くして申請したつもりだが)。
    • 5月3日に本部とCommission President 宛にA4サイズ2 枚弱の補足説明を箇条書きで送る。
    • 5月5日承認の連絡を本部から受ける。
    • 5月17日財政担当に連絡。
    • 5月19日に支払方法の指示と領収書、その他必要書類準備の注意あり。
    • 5月27日に振り込まれる。
     補助金はその大半を6月21・22日のシンポジウムに有効に使用した。 アジアからのプロジェクト申請は今回が最初であったという。次の機会に申請を予定している研究委員会で、 さらに具体的な情報が必要な方は、小野まで連絡されたい。

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気候変動研究委員会(代表者:公文富士夫)

 地球温暖化問題を検討する研究委員会、テフラ研究委員会などと協力して、 新学術領域として「近未来の環境変動予測を確実にするための古気候・環境情報の統合と展開」を申請した。 これは、学会長のリーダーシップのもとに、第四紀学会が果たすべき社会的役割にも対応したもので、 関連する幅広い分野における大きな学術的進展を図れるものと考えている。今年度の審査結果は未決定だが、 計画の充実を図りながら、ねばり強く取り組む。

 このような経過を踏まえ、また、具体的な研究推進策の一環として、7月13日に日大文理学部100年記念館を会場として研究集会を開催した。 43名の参加があり、10件の講演がなされ、活発な議論が行われた、また、学会の枠を越えた協力関係の必要性も確認され、 2008年度の地球惑星合同大会で合同セッションを立ち上げるように、PAGES委員会とも調整することとした。

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テフラ・火山研究委員会(代表者:長岡信治)

 INQUA International Focus Group on Tephrochronology and Volcanology (INTAV) は、INQUA 第17回ケアンズ大会以降、 旧Sub-Commissionon Tephrochronology and Volcanism (SCOTAV)を引き継いだ組織であり、日本国内では、 テフラ・火山研究委員会が対応窓口となっている。近年、カナダ・ドーソンで開催された野外集会(2005年) とオーストラリア・ケアンズで開催されたINQUA大会(2007年)においては、 いずれも日本でのInternational Field Conference and Workshop開催が話題にあがり、日本開催の機運が高まりつつある。 これを受けてすでに2006年度におけるテフラ・火山研究委員会では、日本招致について基本的な合意が得られている。 したがってテフラ・火山研究委員会の活動は、その準備・実行が中心となる。

 2007年度の活動報告を以下に記す。2007年12月23日に明治大学博物館会議室にて委員会メンバー8 名が集まり、 INTAV 招致準備・実行委員会を正式に設置し、福岡孝昭が準備・実行委員長に選出された。 また、この第1回委員会ではを会場候補として九州があげられ、時期や運営費取得について議論された。 2008年4月29−5月1日にかけては、候補地である鹿児島において集会開催地・巡検コースの下見を行ったが、 この時までに開催時期を2010年春とした。その後、日本地球惑星科学連合2008年連合大会期間中の5月28日に招致準備・実行委員会を開催し、 会場・巡検・時期について詳細に検討した。その後6月中に福岡準備・実行委員長が鹿児島にて検討を行い、 最終的に会場を霧島市にすることが決定された。

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古地震・ネオテクトニクス研究委員会(代表者:吾妻 崇)

 例年実施している野外集会については秋に開催する方が望ましいと判断し、今期は実施しなかった。 INQUAのFocus Area“Paleoseismicity and Active Tectonics”で議論されている自然現象に基づく震度階について 2008年地球惑星科学連合大会の「強震動・地震災害」のセッションでポスター発表した。 また、第33回IGC オスロ大会における関連セッションとビジネスミーティングに向けて Focus Area の代表者Alessandro Michetti 氏 と連絡をとりあった。

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