高等学校理科4科目の開講についての要望
日本第四紀学会会員の皆様
このたびの東日本大震災をふまえ,日本第四紀学会より,
日本の理科教育・理学教育の充実についての要望に関する下記の声明を発信いたします.
本声明は文部科学大臣宛の要望書として,文科省教育課程課に会長ほか幹事が,
地学教育別刷号を持参して説明,提出する予定です.
また,都道府県教育委員会の高校教育課にも本要望書を提出する予定ですが,
その際には地域の地学教育に関係する会員の皆様には,提出・説明に際してのご協力をお願いいたします.
なお,本要望は,日本地球惑星科学連合と連携した共同声明としても発信するとともに,
ほかの学会にも働きかけを行う予定です.
日本第四紀学会幹事会
幹事長 百原 新
記
高等学校理科4科目の開講についての要望
2011年5月23日
日本第四紀学会会長 遠藤邦彦
3月11日14時46分にマグニチュード9.0という東北地方太平洋沖地震が発生し,
甚大な被害がもたらされました.この災害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げるとともに,
お亡くなりになられた多数の方々に心から哀悼の意を表します.
日本第四紀学会は,地球科学の関係学会・機関との連携のもとで,
この地震と災害の実態の解明にあたるとともに,その中から多くのものを学び,
さらにその経験を将来の安心・安全で持続可能な社会の構築に生かすべく,努力していく所存です.
第二次世界大戦後の日本において,今回の地震と津波の災害ほど,地球の営みのスケールの大きさと,
その破壊力を我々に見せつけたものはないでしょう.
地球科学に関連する学協会が今提起しなければならない最も重要な課題は,災害の軽減を目標として,
地球科学の研究をより深化させるとともに,日本国民全体を視野に入れた,
地学を含めた科学リテラシーの育成と考えます.豊かな自然に恵まれるとともに地震国でもある日本では,
学校教育の場において,自然災害や環境問題など,
社会や日常生活との接点から地球の様々な営みについて学ぶ地学教育が是非とも必要です.
しかしながら現状においては,高等学校での地学の履修率は約5%ときわめて低く,その主な原因の一つに,
地学が開講されていないことによって,
生徒が地学を学びたくても履修の機会が得られない状況が存在することが挙げられます.
物理,化学,生物と共に,誰もが地学を学ぶことのできる機会を学校教育の場につくることは,
是非とも必要で緊急性のあることと考えます.
日本第四紀学会は,すでに2010年6月に関係学協会の協力を得て地学教育シンポジウムを開催し,
その内容を学会誌「第四紀研究」の地学教育別冊号として刊行しました.この中で,地学教育の現状と,
困難な状況に置かれている教育現場の中での様々な取組が示されています.
新しい学習指導要領の先行実施において, 2012年度(平成24年度)から,
多くの高等学校において理科が3科目選択必修となります.これと関連して,将来の日本を担う高校生が物理,
化学,生物とともに,地学についても等しく履修の機会が得られるよう,
平成24年度より各学校が理科4科目の授業を開設されるよう,
教育課程の編成における適切なご指導を強く要望いたします.
さらに近い将来においては,物理(物理基礎),化学(化学基礎),生物(生物基礎),地学(地学基礎)
の4科目全てが履修できるような教育課程の編成のモデルを積極的に示していただくよう要望します.
また,高等学校の理科教員は専門性が高く,
地学の授業が開設されない主な要因は地学を専門とする教員の不足にありますので,
各自治体における地学教員の採用の促進支援についても強く要望いたします.
日本第四紀学会
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